石川紙業の歴史
1世紀以上にわたり、たゆまぬ挑戦心と利他の精神で誠実に事業に取り組み、地域社会に貢献してきた当社のあゆみをご紹介します。
STORY. 01
石川紙業の根底に流れる古田東逸のスピリット
当社の歴史は、創業者である石川道春(どうしゅん)の実父で、美濃市の開墾と治水に尽力した古田東逸(ふるたとういつ)の存在なくしては語れません。
美濃市を流れる長良川水系の清流は「美濃和紙」という産業を育てましたが、一方で流域の人々の暮らしは、洪水との闘いの歴史でもありました。1876(明治9)年、古田東逸は人々の苦難を救うべく、同志3人とともに小俣川河川敷の開墾計画を立て、実現に奔走。この事業主体として興農社を設立し、自ら社長に就任しました。小俣川の開墾事業は大洪水と濃尾大震災によって幾度も頓挫しましたが、古田東逸は財産を投げ打ち、15年の歳月をかけて道塚堤防を築き開墾に成功。しかし事業半ばに資金難のため、息子の道春を石川家に養子に出したことは、苦渋の決断であったと思います。そんな古田東逸を支えたのは、郷土愛とたゆまぬ挑戦心、利他の精神であったに違いありません。
地域社会と手を携え、信ずるものに向かって不屈の精神で邁進する古田東逸のスピリットは、当社の企業DNAとして現在の私たちへ脈々と受継がれています。
STORY. 02
和紙原料商として創業。石川道春の挑戦
石川紙業は、和紙製紙業を営む石川家の養子となった石川道春によって1902(明治35)年に創業されました。17歳という若さで創業した道春は、和紙製造の傍ら、全国で雁皮(がんぴ)、ねべし(黄蜀葵)などの和紙原料を商い、事業を拡張。有勢組(明治から昭和にかけて結成された美濃和紙業の有力者の集まり)に仲間入りし、後に全国雁皮集荷組合理事長を務めました。20年にわたり美濃町会議員としてまちづくりにも貢献した道春にとって、郷土の産業美濃和紙との縁は、強い郷土愛と事業家としての才覚が重なったもので、実父である古田東逸由来の不屈の精神で、事業を成功することができました。
STORY. 03
「美濃に和紙あり」の評判を高めた謄写版原紙
石川紙業の2代目社長、石川茂(しげる)は父・石川道春が築いた和紙原料商の発展に勤しむ傍ら、戦中戦後の統制経済時代を乗り切るため、1946(昭和16)年より新事業として鉄筆原紙の開発を開始。研究熱心な職人気質であった石川茂は、寝食を惜しんで品質向上に努めました。そして謄写版の普及にともない、自社ブランドの鉄筆原紙「クインハート」を展開。多色刷りができる便利さと、4000枚以上の印刷にも耐えうる高耐久性で、「クインハート」は印刷業者様などに支持をいただき、当社はJIS(日本工業規格)の指定工場に認定されるまでに成長しました。
STORY. 04
和小物・美濃和紙雑貨メーカーへの道
和紙原料商と謄写版原紙メーカーとして確固たる地位を築いた石川紙業でしたが、化学原料とタイプライターやコピー機の出現により、新しい事業の展開が必要になりました。3代目社長石川道政は新たな道を模索する中、美濃和紙を使った文具や土産物に着目し、和雑貨製造部門を創設。当社の商品は、1970年代のディスカバー・ジャパン旅行ブームの後押しもあり順調に売上を伸ばしました。これを契機として、自社の和紙加工技術を駆使して、日本の新しい和紙加工部門のさきがけとして、オリジナル商品の開発を進めました。1975(昭和57)年頃には、和紙原料や謄写版原紙、タイプ原紙といった往年の事業から、和小物・美濃和紙雑貨メーカーへと生まれ変わったのです。
STORY. 05
そして未来へ
2006(平成18)年に5代目社長に就任した石川道大は、1世紀を超える会社の承継を単なる歴史と伝統の積み上げにとどめず、進化させていく契機ととらえました。それはすなわち、時代が劇的に変化する中でマーケットインの発想を強化し、海外も含めたより多くのお客様に喜ばれる商品を創出していくことを意味します。折しも2014(平成26)年11月には、本美濃紙がユネスコの無形文化遺産に登録され、和紙が世界的に注目されるようになりました。2016年岐阜県美濃市うだつの上がる町並みに、手作り体験が楽しめる「美濃和紙雑貨体験ショップ石川紙業」開店。石川紙業はこれからも「豊かな日本の心をプレゼント」を社是に掲げ、美濃の地で社員や内職さん、お客様とともに次代のビジネスに取り組んでいきます。
石川紙業の沿革
1902(明治35)年 | 初代社長の石川道春が和紙原料商を創業。雁皮紙、黄屬葵を扱い、美濃和紙業界の中核を担う。全国雁皮組合組合長、町会議員、商工会議所常議員を常任し、業界と町に尽くす。 |
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1941(昭和16)年 | 原料商の傍ら、抄紙技術を生かした鉄筆原子の研究開発と製造を開始。謄写版の普及で鉄筆原紙は謄写版原紙へ発展し、自社ブランド「クインハート」を発売。 |
1949(昭和24)年 | 法人に改組。JIS(日本工業規格)の指定工場に認定される。 |
1957(昭和32)年 | 2代目の石川茂が社長に就任。1967年学校教材部門、和紙・民芸品部門を創設。 |
1982(昭和57)年 | 3代目の石川道政が社長に就任。「豊かな日本の心をプレゼント」を経営理念に、和雑貨製造部門を創設。 |
1995(平成7)年 | 石川道政の美濃市長就任に伴い、当時の常務が4代目社長に就任。石川道政は、小さくてもキラリと光るオンリーワンの美濃市を目指し、18年5カ月美濃市政を担う。後に旭日中綬章と美濃市名誉市民の称号を授かる。 |
2001(平成13)年 | 東京インターナショナルギフトショーへの出展を開始。美濃和紙を使ったオリジナル和雑貨が好評を博す。全国へ販路拡大。 |
2006(平成18)年 | 5代目の石川道大が社長に就任。社業の主体を美濃和紙雑貨を含む和雑貨へ拡大。 |
2014(平成26)年 | インバウンド客向けの商品開発を開始するなど、美濃和紙雑貨のブランディングを強化。 |
2015(平成27)年 | 全国47都道府県への販売網を達成。月刊のカタログ情報誌「粋粋通信」が30周年を迎える。 |
2016(平成28)年 |
5月1日岐阜県美濃市うだつの上がる町並みに「美濃和紙雑貨体験ショップ石川紙業」開店。 経済産業省「地域産業資源活用事業計画」認定 岐阜県「飛騨・美濃すぐれもの」認定 国土交通省「昇龍道ものづくり銘選」選定。 |
2017(平成29)年 | 経済産業省「はばたく中小企業300社」受賞。 |